小児期発症の慢性疾病を持つ患者さんは、年齢が上がるにつれて小児期医療から成人期医療へ移り変わることが必要となります。移行期医療では小児診療科と成人診療科が連携し合って患者さんを支えていくことが理想と考えます。移行期医療支援は、小児診療科から成人診療科への移行に関わる医療体制の整備と、患者さん自身が移行していくための自律(自立)への支援の2つを主たる目的としています。
体制整備にあたってはクリニックや在宅診療などかかりつけ医、専門診療医、急性期疾病への後方支援病院などの連携のほか、行政制度や福祉、就労支援など多職種で共働することが重要です。すでに移行年齢以上となっている方には喫緊の課題となります。適切な成人診療科にトランジション(転科)するためには、診療可能な成人診療科の情報が欠かせません。移行期医療にご理解いただき、お引き受けいただける成人診療科を把握するとともに、そのような協力医療機関を増やしていけるよう、成人診療科の先生方と密接に連携を取り、ご理解を賜っていただけるよう情報の共有や啓蒙に励みます。自律(自立)支援では、これまで保護者が率先して医療を受けさせていた小児患者に対して、自らがヘルスリテラシーを獲得し自身で医療管理を行っていけるように成長・発達に応じた支援をしていくことが重要です。
対象となる方の範囲ですが、小児期から成人期に移り変わる、いわゆる移行年齢である15歳から20歳までが対象ですが、それより前の年齢から自律(自立)に向けて支援となることもあります。また、すでに成人年齢に達しているもののまだ小児科単科での診療のみとなっている方も対象となり得ます。疾病範囲は小児慢性特定疾病が主体となりますが、場合によっては他の小児慢性疾病等も検討に入ります。医療的ケア児や心身障害児に対しても在宅医療支援や急性期疾病への後方支援診療など、診療範囲を適切に定めて分担するコーディネートを行ってまいります。
(センター長 田中 藤樹)
2023年8月1日より北海道移行期医療支援体制整備事業として、北海道からの委託を受けて、北海道医療センター内に北海道移行期医療支援センターを設置いたしました。院内での呼称は「小児慢性特定疾病・在宅・移行期医療支援センター」としました。主に小児慢性特定疾病について、移行期年齢に差し掛かった方に対して、1)自律(自立)支援、2)医療体制整備を提供していきます。そのために、医師とともに移行期医療支援コーディネーターも配置いたしました。道内の患者及び医療機関に対して、適切な移行が進むよう支援していきたいと思います。
移行期医療相談 | 移行期医療支援コーディネーターによる個別相談、北海道医療センターにおける移行期医療支援外来の実施 |
---|---|
移行期医療ネットワークの構築と連携 | 道内各地のクリニック、在宅医療機関、総合病院、基幹病院の小児診療科、成人診療科と連携を図る |
就労・就学支援や行政制度の情報提供 | 他職種、行政と連携を図り、適切な福祉、サポートへつなげていく |
啓蒙、広報 | 全道域へ医療従事者と関係者向け研修会、講習会の開催 |
相談シート(エクセル:32KB) |
相談シート(PDF:512KB) |
相談シート(記入例) |