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地域医療支援病院
我が国は急速に高齢化社会へと移行しつつあり、今後65歳以上の5人に一人が認知症に罹患するとの予測もあります。認知症は病名ではなく、その中には様々な疾患が含まれ、最も多いアルツハイマー型認知症をはじめ、レビー小体病や前頭側頭型認知症の他、正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫など治療可能な疾患もあり、さらに変性疾患としての認知症は病初期、中期、後期と進むにつれて、症状が変化していきます。このようなことから、認知症は一医療機関で最初から最後まで対応できるものでもなく、家族や関わる人の対応も、その状況に応じて変わっていきます。そのため、それぞれの医療機関はどのような場面・状況で、それぞれの強みを発揮して、連携して一人の患者さんにあたっていくことが求められます。
当院は、西区を中心とした「地域で認知症を診ていく」環境において果たすべき役割を考えました。結果、認知症が疑われた場合に適確な診断を行い、その後の道筋を付け、疾患にあわせたアドバイスすることを目的に「認知症疾患診断センター」を2016年10月に開設し、運営してまいりました。その中で、連携施設と関係を密にしながら認知症診療を行い、認知症患者さんのそれぞれの状態に応じた適切な医療を「地域」として提供できる体制作りを目指してきました。
今回、2024年4月に、札幌市の認知症疾患医療センターの指定を受け、特に認知症の診断、身体合併症治療、新規抗体薬治療を中心とした「認知症疾患医療センター」へと移行しました。認知症疾患医療センターは認知症に関する専門的な診断や症状への対応、専門医療相談などを行う医療機関です。これまで以上に、かかりつけ医、介護・福祉施設などと連携し、地域の中で認知症の方やその家族に、適切な専門医療を提供することを目指します。
認知症に強い、そして認知症患者の方が安心して暮らせる「地域」を目指して皆様とともに歩んでいきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
認知症の治療は早期発見・早期治療が重要ですが、認知症の診断は初期ほど難しく、専門医による診察と高度医療機器を使った画像検査が必要です。
そこで、北海道医療センターでは「認知症疾患医療センター」を開設し、専門医を中心としたチームで認知症初期からの鑑別診断を行っています。
認知症専門医療機関の不足から、認知症として医療機関を受診していない「潜在的認知症患者」が多数いるとされています。
また、治療ができないほど進行した状態での専門医受診が少なくありません。高齢化率の高まりとともに、かかりつけ医療機関の患者さんが認知症を発症するケースが増加することが予想され、かかりつけ医が日常診療の中で積極的に早期検出に関われる体制づくりが急務といわれています。
しかし、認知症は原因疾患が多様で、初期症状は加齢や性格的な行動との区別が難しいこと から診断は容易ではありません。
患者さんの「異変」に気づいたら早めに専門医に受診し、早期の段階で正しい治療の方向性を見いだすことです。
かかりつけ医と専門医とのスムーズな連携が、患者さんのその後の人生をより良いものにします。
~ かかりつけ医を中心とした体制づくり ~
難しいとされる認知症初期の診断を、日本神経学会専門医・指導医を中心とした専門チームが担当しています。認知症は種類によって、病期ごとの症状や治療法が大きく異なるため、できるだけ早い段階で鑑別診断を行うことが大切です。
甲状腺ホルモンやアンモニアなども含め、認知機能低下に関わる可能性のある項目をチェックし、身体疾患をスクリーニングします。
MRI で脳の画像を撮影し、早期アルツハイマー型認知症診断支援システムVSRAD を用いて、アルツハイマー病の病態学的特徴がないかを調べます。
また、MRI 画像の水平断や冠状断は、血管性認知症、前頭側頭型認知症、特発性正常水頭症などの鑑別に有用です。
認知機能を評価するスクリーニング検査を2種類行います。
本人と家族に検査結果を説明し、今後の療養や治療について説明します。