低侵襲手術センター
腹腔鏡手術では腹腔内に炭酸ガスを注入して手術する空間をつくりますが、胸腔鏡手術では肺の中の空気を抜いて肺を萎ませて空間をつくり手術を行います。術中は反対側の肺だけで呼吸させています。
腹腔鏡手術では炭酸ガスが逃げないように腹部を密閉する特別な器具を用いて手術を行いますが、胸腔鏡手術では密閉する必要がなく、通常の開胸手術に用いる器具を使用して手術を行います。
しかし、胸腔鏡手術の創部の大きさは通常3~5cm程度と限られるため、時に1つの創部から3~4本の器械を操って、器具が干渉しないようにしながら手術を行うこともあり高度な技術を要します。
特に肺の血管は体血管に比べて太く非常に脆弱なため、出血する事態となれば大量出血につながります。こうした肺血管を取り扱うには繊細な手技が必要になるため、その精度を高めるさまざまな工夫と応用が生まれています。
条件にもよりますが、当院ではできるだけ低侵襲な治療を行いたいという考えから、良性疾患である気胸などは2・5cmと5mmの2カ所の創部で胸腔鏡手術を行っています。
また、脳神経内科の協力のもと重症筋無力症や胸腺腫に対する拡大胸腺摘出術を行っていますが、近年は病状の状態によって胸腔鏡手術を採用しています。
従来の拡大胸腺摘出術は、胸骨を縦切開して胸部を「観音開き」のように開いて手術を行うため、大きな傷跡と術後の疼痛を伴う手術でしたが、胸腔鏡手術では疼痛の軽減のみならず、手術創が小さく整容性に優れ、胸の中心に傷がないために襟元が開いた服が着られるなどの利点があります。
これはダビンチXiというロボットを使用して行う手術です。このロボットを用いた手術では、組織が立体的に観察できること、手首のように自由に曲がる鉗子を用いるため、組織に適した角度から操作ができること、そして手ぶれ防止機能を有しているなど様々なメリットがあります。このように、それまで行っていた通常の胸腔鏡下手術とは異なる特徴があり、特に高難易度症例で、より質の高い手術を提供できるようになります。 また、当院は重症筋無力症や胸腺腫を多く診療しており、これらの疾患に対してはロボットを用いた手術が特に有用と考えられており、非常に期待されるところです。 いまだ、実際の手術開始時期は未定ですが、導入された際には患者様に更なる恩恵が得られるものと考えております。