北海道難病診療連携拠点病院
難病はその定義にあるとおり患者数が希少であることは当然として、診療する専門医も同様に希少です。さらには、その希少な医師が大都市圏に偏在していることもよく知られているところです。
「北海道難病遠隔医療研究会」は、北海道における難病医療の均霑化・標準化、人材育成、難病診療へのICTの活用、オンライン診療システムについての研究、研修会開催などを目的として、2023年3月27日に設立されました。
難病医療に関わる医師、看護師、保健師、リハビリテーションスタッフ、医療ソーシャルワーカーなどの医療者はもとより、研究者、製薬企業、行政担当者などにも広く入会のご案内をさせていただきます。
難病には、難病法で指定されているものが338疾患ある。小児慢性特定疾病に指定されているものは788疾患ある。指定難病・小慢の下位分類、未指定難病を加えると20,000を超える。
難病はその定義にあるとおり、希少疾患であるが、診療する専門医も同様に希少である。さらには、その希少な医師が大都市圏に偏在していることもよく知られているところである(*)。しかし、専門医が人口の希薄な地域に勤務することは、人材配置の効率性から考えると、これも問題と云える。
難病の多くでは、症状の進行と共に、受診のための移動が困難となる。北海道では、冬期間の暴風雪による交通網の寸断も毎年のことである。これらのため、以前より遠隔医療(オンライン診療)の必要性が議論されてきた。COVID-19の蔓延による難病患者の受診差し控えの問題も明らかになり、遠隔医療(オンライン診療)は喫緊の課題と認識されるようになった。オンライン診療により、通院にかかる患者本人および介護者の身体的・精神的・経済的負担は、大いに軽減される。これにより診療の継続も維持されやすくなる。オンライン診療では、それらに加え、実生活の場での症状の確認(診察室と家庭での症状のギャップ)や、療養環境の状況、家族背景などの情報も得られる。訪問看護や訪問リハビリの状況の把握、かかりつけ医や看護・リハビリスタッフとの情報交換にも利用することが可能である。
一方、炎症性腸疾患などでは治療法の開発が進み、働きながら・勉強しながら治療を続けるという状況が当然のこととなってきた。学業・就労との両立の阻害因子として、通院による負担が大きい。専門医の勤務する基幹病院までの通院には時間がかかる。また、体調不良時に迅速に診療を受けることが困難である。ここにオンライン診療を利用することのメリットは大きい。
また、地方に勤務する医師にとって、専門医のアドバイスを受けることは、診療レベルの維持・向上に極めて有用である。地方勤務の若手医師にとっては、教育の機会を得ることにもなる(Doctor to Patient with Doctor, D to P with D) 。
デバイスを利用した患者情報の収集については日進月歩の時代となり、この技術を遠隔医療に活用することがすでに始まっている。
インターネットに関わるシステムの進歩は目覚ましい。しかし、情報セキュリティーの担保が重要であり、また、診療報酬との関係など整備が不十分な事項も存在する。
「北海道難病遠隔医療研究会」は、北海道における難病医療の均霑化・標準化、人材育成、難病診療へのICTの活用、オンライン診療システムについての研究、研修会開催などを目的とする。
(*)北海道では、脳神経内科専門医の絶対数の不足に加えその偏在が顕著である。道内神経内科専門医のうち、61%が札幌、13%が旭川に居住している。さらに、北海道は広大であるため、面積あたりの専門 医は0.02人/100㎢(全国平均1.2人/100㎢)で、宗谷地方は山梨県とほぼ同じ面積でありながら専門医はゼロである。
2022年12月
発起人代表 菊地誠志
発起人 仲瀬裕志
発起人 矢部一郎
本研究会の活動により、以下の効果が考えられる。
063-0005 北海道札幌市西区山の手5条7丁目1-1
TEL (011) 611-8111
北海道医療センター 難病診療センター 宮﨑 雄生