集中治療科は聞きなれない診療科名かもしれません。
昨年、集中治療科専門医が日本専門医機構サブスペシャルティ領域に認定され、医師届出票へ集中治療科が追加されたことに伴い標榜することになりました。COVID-19の重症治療の際に有名になったECMO(Extra corporeal membrane oxygenation)による重症呼吸不全治療などが集中治療だと言えばイメージがつかめるかもしれません。
集中治療とは「集中治療室(ICU)」で「高度先進医療機器」が行うものというイメージがありますが、実際には集中治療エキスパートのチーム医療によって成り立つもので、「機械」や「ユニット」が重症患者さんを治療するわけではありません。COVID-19パンデミックの際も「ECMOが足りない」「ベッドが無い」と言う話になりましたが、「ECMOや人工呼吸管理を必要とする患者さんの治療やケアに習熟した医療者が足りない」が正しい理解です。
集中治療医が関わる患者さんは身体に大きな侵襲(invasion)が与えられた方々です。侵襲とは人間の防御調整機能を破り生命に危機を与えるような異常を言います。それらの侵襲から患者さんを守り回復を助けることが集中治療の役目であり、特別な機械を使って特殊な治療を行うものではありません。侵襲を軽減し患者さんの回復力を支えることが集中治療の主目的となります。
集中治療の対象となる患者さんは、北海道医療センターには救命センターに6床、院内一般ICUとして4床の集中治療が可能な病床を有し、5人の集中治療専門医が救急科、循環器内科、麻酔科、心臓血管外科、脳外科などと協力し、24時間の診療体制を維持しております。また集中ケア認定看護師、救命救急認定看護師と診療看護師が複数在籍し、高いレベルでの看護を行いつつ診療へも参加可能でシームレスな治療を可能としております。
現在は集中治療の範囲も広がり、「pre-ICU」「post-ICU」への関与が大きな仕事となってきました。前者ではRRT(Rapid response team)への参加であり、院内急変の前に介入して急変を防ぐものです。このRRS(Rapid response system)は急性期病院には必須のものとして医療機能評価などでのその運用が求められているものです。導入を計画していらっしゃる病院さんがあれば、構築のお手伝いが可能ですのでご相談いただければと思います。また後者では最近の集中治療の最大のテーマであるPICS(Post intensive care syndrome)の防止が主になります。何とか救命しても望んだ予後に繋がらなければ意味がありません。より侵襲度の低い集中治療と早期のリハビリテーションを両立させ、「延命」ではないpost-ICUを目指します。御高齢の方でも適応を見極めれば高い生活力を維持したpost-ICUが可能です。90歳以上の患者さんでも、短期間の集中治療と早期リハビリテーションの導入により、救命後独歩退院する例が珍しくなくなって参りました。勿論御高齢の方への集中治療はfutility(価値を見出せない)が多いことは従前と変わりません。しかし多くの知見と技術の進歩により、多種の可能性が広がってきております。ぜひあきらめる前にご相談いただけますことをお願い申し上げます。ご紹介は各診療科を通じて応需しておりますので宜しくお願い申し上げます。
氏名・職名 | 認定資格 | 主な専門分野 |
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しちのへ やすお 七戸 康夫副院長 集中治療科長 |
日本救急医学会指導医・救急科専門医 日本麻酔科学会麻酔科専門医 日本集中治療医学会集中治療専門医 日本病院総合診療医学会認定医 ICD(インフェクション・コントロール・ドクター) 北海道災害医療コーディネーター(地域) 日本DMAT隊員(統括DMAT登録) JATECインストラクター |
救急医学、集中治療医学、 災害医療 |
さとう ともひろ 佐藤 智洋医師 |
日本救急医学会救急科専門医 日本集中治療医学会集中治療専門医 日本麻酔科学会麻酔科専門医 |
救命救急、外傷診療 集中治療、IVR、麻酔 |