筋肉を繰り返し使うことで筋力が低下し、休息すると回復する「易疲労性」を特徴とする病気です。
朝や起床時には症状が軽く、活動を続けると夕方から夜にかけて症状が強くなる「日内変動」がみられることが特徴です。
近年の疫学調査では、有病率は人口1万人あたり2~3人程度とされ、男女比は約1:1.7で女性にやや多い病気です。
近年は65歳以上で発症する患者さんが増加しており、高齢の方にも珍しい病気ではありません。
「重症筋無力症」という病名から、恐ろしい病気を想像される方も少なくありません。
しかし、有効な治療法が限られていた時代に付けられた病名です。
現在では、治療法が大きく進歩し、多くの患者さんで症状を良好にコントロールできるようになっています。
適切な治療を継続することで、これまでと変わらない日常生活を送っている患者さんもたくさんいらっしゃいます。
重症筋無力症の症状は、大きく3つに分けられます。
目の症状から始まり、その後、全身へと症状が広がっていくことが一般的ですが、目の症状だけに限局する「眼筋型重症筋無力症」の患者さんも少なくありません。
重症筋無力症は自己免疫疾患のひとつです。
「自己免疫」とは、本来であれば細菌やウイルスなどの外敵から体を守る免疫が、何らかの原因で自分自身の体を攻撃してしまう状態です。
重症筋無力症では、主に2種類の自己抗体が知られています。
最も多くみられる自己抗体です。
神経から筋肉へ命令を伝える「アセチルコリン受容体」を攻撃することで、筋力低下が起こります。
AChR抗体に次いで多い自己抗体です。
神経と筋肉のつなぎ目にある「MuSK」というたんぱく質を攻撃します。
飲み込みや話すこと、呼吸に関わる筋肉の症状が目立つことがあります。
その他の自己抗体、または現在の検査では自己抗体が検出されない患者さんが約10%前後います
重症筋無力症では、「自己抗体」と呼ばれる抗体が、神経と筋肉のつなぎ目(神経筋接合部)を攻撃します。
脳から送られた「筋肉を動かしなさい」という命令が筋肉へうまく伝わらず、筋力が低下したり、筋肉を使い続けると疲れやすくなったりします。
などから総合的に判断します、いずれも外来受診で可能な検査となります
| 脳MRI検査 | 脳や脳神経の病気でも、'まぶたが下がる'や'物が二重に見える'などの症状が現れることがあります。他の病気ではないことを確認する目的で行います。 |
|---|---|
| 呼吸機能検査 | 呼吸に関わる筋肉の筋力が低下していないかを調べます。 |
| 胸部CT検査 | 胸腺腫など、胸腺に異常がないかを確認します。 |
胸腺は、心臓の前面にある免疫に関わる臓器です。
通常は思春期頃までに役割を終え、年齢とともに小さくなります。しかし、成人になっても胸腺が残っていたり(遺残胸腺)、胸腺腫と呼ばれる腫瘍が見つかったりすることがあります。
胸腺は重症筋無力症の発症に深く関わっていると考えられており、約10~15%の患者さんでは胸腺腫を合併します。また、胸腺腫のない患者さんでも、胸腺に異常がみられることがあります。
胸腺腫が見つかった場合は、治療の一環として胸腺摘出術をおすすめします。*当院では脳神経内科と呼吸器外科が密接に連携し、これまで多くの重症筋無力症患者さんの治療を行ってきました。安心してご相談ください。
「できるだけ少ないステロイドで症状を良好にコントロールすること」が治療目標となります。
ステロイドは重症筋無力症に有効な薬です。しかし、高用量を長期間使用すると、糖尿病、骨粗しょう症、感染症、など、さまざまな副作用が起こることがあります。
そのため、必要に応じて免疫グロブリン大量静注療法や血液浄化療法、分子標的治療薬などを早期から組み合わせることで、 高用量ステロイドを長期間使用することなく、病気を安定した状態へ導くことを目指します。
このような治療方針を「早期治療戦略(Early Fast-acting Treatment:EFT)」と呼び、我が国の重症筋無力症診療ガイドライン2022で推奨されています。
早い時期に適切な治療を開始するほど良好な経過が期待できることが分かっていることとから、症状が比較的軽い場合でも、将来の重症化を防ぐ目的で、入院での治療をおすすめすることがあります。
治療についての詳しい内容は、別ページでご紹介しています。
当院では、2025年は外来406名、入院106名の重症筋無力症患者さんを診療しました。
近年の診療実績(延べ人数)は以下のとおりです。
| 年 | 入院 | 外来 |
|---|---|---|
| 2023年 | 229人 | 2,316人 |
| 2024年 | 232人 | 2,218人 |
| 2025年 | 232人 | 2,172人 |
新しい治療法である分子標的治療薬についても積極的に導入しております。
当院では、脳神経内科だけでなく、呼吸器外科、リハビリテーション科、臨床工学技士(ME)、看護師、薬剤師、言語聴覚士(ST)など、多職種が連携したチーム医療を行っています。
飲み込みに不安がある患者さんには、リハビリテーション科医師と言語聴覚士(ST)による専門的な嚥下機能評価やリハビリテーションを実施し、安全に食事を続けられるよう支援しています。
また、血漿浄化療法では、経験豊富な臨床工学技士(ME)が医師・看護師と連携し、安全で質の高い治療を提供しています。
患者さん一人ひとりの病状やライフスタイルに合わせて最適な治療法をご提案します。治療についてご不安なことやご不明な点がありましたら、どんなことでもお気軽に主医やスタッフへご相談ください。
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