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視神経脊髄炎スペクトラム障害

 視神経脊髄炎スペクトラム障害(Neuromyelitis Optica Spectrum Disorder、以下NMOSD)は、免疫の異常により中枢神経系に炎症が繰り返し起こる神経免疫疾患の一つです。このような特徴から、NMOSDは2000年代前半まで多発性硬化症の一部と考えられてきました。しかし、2004年にNMOSD患者さんの血液中に抗アクアポリン4抗体というタンパク質が検出されることが明らかとなり、NMOSDは多発性硬化症とは異なる独立した疾患と考えられるようになりました。

 NMOSDは男性よりも女性に多くみられ、発症年齢はさまざまです。NMOSDに特徴的な症状としては、ものが見えにくい、手足に力が入りにくい・しびれる、吐き気・嘔吐・しゃっくりが続く、排尿・排便の障害がある、ものが二重に見える、意識がもうろうとする、などが挙げられます。一般的には、これらの症状が数日から数週間かけて悪化します。炎症が強い場合には、後遺症が残ることもあります。

症状イメージ
イラスト:えみすけ

NMOSDの診断

 NMOSDの診断は、発症からの経過、神経診察、MRI検査、血液検査、髄液検査などの結果をもとに総合的に行います。血液検査で抗アクアポリン4抗体が陽性であるとNMOSDの可能性が高くなりますが、陰性であってもNMOSDを直ちに否定することはできないため、慎重な判断が必要です。

NMOSDの治療

 NMOSDの治療は、「再発時の治療」「再発を予防する治療」「残存した症状に対する対症療法・リハビリテーション」に分かれます。再発時には、ステロイドの点滴を3〜5日間連続で行う治療が一般的です(ステロイドパルス治療)。当院では、症状や病状に応じて、入院または外来通院でステロイドパルス治療を行っています。ステロイドパルス治療の効果が不十分な場合や、症状が重い場合には、血液浄化療法や免疫グロブリン治療(視神経炎の場合)を行うことがあります。再発の後遺症を可能な限り軽減するためには、速やかに治療を開始する必要がありますが、当院はステロイドパルス、血液浄化療法、免疫グロブリン治療とも速やかに開始できる体制を整えています。

NMOSDと診断された場合には、できるだけ早い段階で再発予防治療を開始することが重要です。従来のNMOSD再発予防治療は、ステロイドや免疫抑制薬の内服が中心でした。しかし、近年は治療の選択肢が広がり、現在ではアクアポリン4抗体陽性NMOSD患者さんに対して、生物学的製剤と呼ばれる注射薬・点滴薬が5種類使用可能となっています。

生物学的製剤

NMOSD再発予防薬を選択する際には2023年に発行されたMS・NMOSD診療ガイドラインが参考になります。

このガイドラインでは、NMOSD治療の目標として、「再発を起こさないこと」と「ステロイドは減量し、可能な限り中止すること」の2点が示されています。そのうえで、この目標を達成するための治療選択肢として、経口免疫抑制薬と生物学的製剤が挙げられています。診断時から生物学的製剤を選択肢として検討できること、また、従来中心的に用いられてきた経口ステロイド薬は、免疫抑制薬を補う位置づけとして少量にとどめることが記載されています。当院では、このガイドラインを参考にしながら、患者さんごとの病状に応じて治療方針を検討しています。また、生物学的製剤は5種類全て対応しています。

生物学的製剤

なお、このアルゴリズムは初発時、または再発直後に主に適用されます。しばらく再発がなく経過している患者さんの治療については、個別の判断が必要となるため、担当医とご相談ください。

NMOSDの定期検査

NMOSDの患者さんには、通院中に定期的な検査を受けていただきます。主な目的は、治療薬による副作用が出ていないかを確認することです。副作用の種類は薬剤ごとに異なるため、必要な検査も患者さんごとに異なります。基本的には、多くの患者さんで血液検査を2〜6か月ごとに行います。加えて、ステロイド治療を受けている患者さんでは、さまざまな副作用の可能性があるため、眼科受診(白内障・緑内障の確認)や骨塩定量検査(骨粗鬆症の有無や程度の評価)などの定期検査をお勧めしています。当院では、必要に応じて複数の診療科と連携しながら治療を行っています

生物学的製剤
イラスト:えみすけ
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