【視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)と新型コロナウイルスワクチン】
2021年1月29日にGuthy-Jackson Charitable Foundationという国際団体の主催で行われたweb講演会のワクチンに関する要旨をご紹介 詳細はこちら
視神経脊髄炎は、免疫系の異常により中枢神経系に繰り返し炎症が起きる神経免疫疾患の一つです。このように書くと多発性硬化症と同じと思われるかもしれません。 実際に、視神経脊髄炎は、多発性硬化症と同様に神経症状の増悪を繰り返すために従来は多発性硬化症の一部と考えられてきました。しかし、2000年代中頃に本疾患患者さんの血中に抗アクアポリン4抗体という蛋白質が検出されることが判明し、多発性硬化症とは異なる疾患であると考えられるようになりました。
視神経脊髄炎は男性よりも女性に多く発症し、発症年齢は様々です。視神経脊髄炎に特徴的な症状としては物が見えづらい、手足に力が入らない・しびれる、吐き気・嘔吐・しゃっくりが続く、ものが二重に見える、意識がもうろうとするなどが挙げられます。一般的にはこれらの症状が数日から数週間かけて増悪し、適切な治療を施さないと後遺症を残すことがあります。
視神経脊髄炎の診断は発症からの経過、神経診察、MRI検査、血液検査、髄液検査などの結果に基づき総合的に行います。血液検査で抗アクアポリン4抗体が陽性であると視神経脊髄炎の可能性が高くなります。しかし、この検査が陰性の場合でも視神経脊髄炎を完全に否定は出来ず、慎重な判断が必要です。非常に重要なことは視神経脊髄炎の患者さんに多発性硬化症の治療薬を使ってしまうと症状が悪化してしまう恐れがあることです。このため、視神経脊髄炎の診断・治療には本疾患と多発性硬化症両者の充分な知識と経験が必要となります。
視神経脊髄炎の治療は再発時の治療、再発を予防する治療、残存した症状に対する対症療法・リハビリテーションに分かれます。再発時にはステロイド剤の点滴(ステロイドパルス治療)や血液浄化治療、免疫グロブリン治療(視神経炎の場合)を行います。 再発の予防にはステロイドの長期内服や免疫抑制剤、生物学的製剤を使用します。治療は長期間に及ぶことが多いため、治療薬による副作用がないかどうか定期的な検査が必要となります。
2023年1月13日