脳の動脈が狭くなったり、詰まることにより、その先の脳組織の血流が不足すると、その場所に応じて、手足の麻痺や、言葉の障害など、様々な症状を呈します。ある程度以上の時間虚血にさらされて死んでしまった脳組織は、その後血流が再開しても元に戻りません。この状態を脳梗塞といいます。 発症からの時間が短く、脳組織がまだ不可逆的な脳梗塞に陥っていない状態であれば、血流を再開通させる治療により、症状の改善が期待できます。 治療法としては、以下の2つがあります。
1. 血栓溶解剤(t-PA 組織プラスミノーゲンアクチベーター)静注療法
2. 脳血管内治療手技を用いた再開通治療(主に経皮的機械的脳血栓回収術)
t-PA静注療法が標準治療で、我々も積極的に行っておりますが、主幹動脈閉塞の場合、必ずしも再開通率は高くなく、再開通がえられなかった場合の予後は不良であること、また、適応基準が非常に厳しく、再開通がえられれば症状改善が期待出来るのにrt-PAを使用出来ないことがしばしばあることが問題でした。こういった症例を対象に、血栓を機械的に取り除くことにより高い再開通率の期待出来るデバイスが近年開発され、高い再開通率が得られるようになってきました。2015年には、tPA静注療法も含めた内科的治療のみと比較して、機械的血栓回収術を追加することにより、有意に患者転機を改善した、とする臨床試験結果が相次いで報告されました。一定の条件を満たす患者においては、本治療を考慮することが、強く推奨されています。
少しでも後遺症を軽くできるように、我々も、この治療を積極的に取り入れ、24時間常時行いえる体制をとっています。ここ3年間ではおおむね8割の患者で再開通をえており、50%の患者が元の生活に復帰しています。
最新治療で急性期脳梗塞を迎え撃つ
(北海道医療センタージャーナル Vol.1へのリンク)