脳に限らず、人間の身体の血液の流れは、まず心臓から送りだされた血液は動脈を通って運ばれます。動脈は細かく枝分かれして毛細血管となり、ここで組織に栄養を与えたり、酸素と二酸化炭素の交換をした後、再び集まって静脈となり心臓へと還流していきます。動静脈奇形とは、動脈と静脈が毛細血管を通らずに、ナイダスとよばれる異常血管網を介して直接吻合している病気です。このため、動脈の高い圧がナイダスや静脈に直接かかることとなり、破裂して脳出血をきたす原因となります。また、てんかん発作の原因となることもあります。
脳動静脈奇形の治療法としては、①開頭手術、②放射線治療、③血管内治療(塞栓術)があります。 開頭手術は最も根治性の高い治療ですが、侵襲的であり、部位や大きさによっては技術的に困難なことがあります。 放射線治療は、非侵襲的に根治の望める治療ですが、大きいものになると根治が難しくなります。また、効果が現われるまでに時間を要することも欠点で、一般に2年程度かかるとされており、その間は出血の危険性がなくならないことも欠点です。
マイクロカテーテルを流入動脈のナイダス直前まで進め、これを閉塞します。塞栓物質としてはさまざまなものがありますが、主に使用されるのはOnyx (オニキス)、あるいはNBCA (nブチルシアノアクリレート)という物質です。 血管内治療単独での根治はあまり期待できませんが、開頭手術や放射線治療の前処置としてこれらの欠点を補うように行われます。より安全に根治を得るためには、どのように治療を組み合わせて行うかの治療計画が重要で、高度な専門的判断が必要です。
脳出血で発症した右後頭葉動静脈奇形
マイクロカテーテルを流入動脈からナイダスまで進め閉塞した。
塞栓術後