くも膜下出血の原因の大部分は脳動脈瘤の破裂によるものです。また、動脈瘤は、脳ドックや他の脳疾患の精査などで、破裂をきたす前に発見されることも少なくありません。破裂動脈瘤、未破裂動脈瘤ともに血管内治療の対象となります。動脈瘤からの(再)出血の防止がその治療の主な目的です。
塞栓物質としては主に離脱式コイルが使用されます。これは形状の記憶された柔軟なプラチナ製のマイクロ・コイルがデリバリー・ワイヤーに接続されているもので、専用の機械でコイルを離脱することができます。離脱するまでは、何度でも出し入れが可能で、また、さまざまな径、長さのものが用意されており、動脈瘤の形態に適合させやすくなっています。
治療は、通常、全身麻酔で行われます。まず、鼠径部の動脈から、マイクロ・カテーテルという細い管を動脈瘤の中まで進めます。このカテーテルを通して離脱式コイルを動脈瘤内へ挿入してゆき、内部を密に充填します。
血管内治療は、非侵襲的であることが最大の利点です。
一方で、動脈瘤の形態、大きさによっては完全閉塞がえられないことがあること、再開通や動脈瘤の再増大をきたすことがあること、これらの場合、動脈瘤からの出血の危険性がゼロではないこと、追加治療を要する可能性があること、などが欠点として挙げられます。
患者さんごとに、年齢、全身状態、動脈瘤の部位、大きさ、形態、周囲の血管との関係などを考慮して、開頭手術か、血管内治療か、より安全と考えられる治療法を選択することとなります。
2002年には、ヨーロッパを中心に行われたISAT (International Study of Aneurysm Therapy) という研究の結果が発表されました。これは、開頭手術、血管内治療のいずれでも治療可能と判断された破裂動脈瘤(くも膜下出血)患者 2143例を無作為に、血管内治療群 (1073例)と開頭手術群 (1070例)にふりわけ、その治療成績を比較検討したものです。その結果、一年後に“日常生活要介助または死亡”となった症例の比率が、血管内手術群で23.7%と、外科手術群の30.6%に比べ有為に少なく、良好な予後がえられた、としています。
未破裂動脈瘤においては、開頭手術と血管内治療を比較検討した同様の臨床研究は施行されておりません。治療目的が主に予防であり、安全性と長期の効果が求められる疾患であり、より慎重な治療法選択が必要となります。
くも膜下出血で発症した動脈瘤
コイルを1本挿入したところ
最終像 動脈瘤は描出されない