頭蓋骨と脳の間にあり脳を包んでいる膜を硬膜といいます。硬膜には、脳の静脈が集まって流れる静脈洞が走っています。この静脈洞に、本来硬膜を栄養している動脈が直接流れ込んでしまう病気を硬膜動静脈瘻といいます。耳鳴り(動脈血が流れ込む音がザーザーと聞こえることがある)がするだけで、積極的治療を要しないこともありますが、脳の静脈へ、動脈血流が逆流し静脈の圧が高まると、脳のうっ血や脳出血をきたし、手足の麻痺、言葉の障害、痴呆症、てんかん発作など、部位によりさまざまな症状を呈する危険性があります。目の奥の海綿静脈洞という部位にできると、目の充血や突出、物が二重に見える、などの目に関連した症状をきたします。脊髄にできると足の脱力、しびれ、排尿障害などをきたします。
①開頭手術、②放射線治療、③血管内治療、がありますが、多くの場合で、血管内治療が非侵襲的で根治率の高い第一選択の治療となります。 血管内治療の方法としては、病変部に流れ込む動脈を閉塞させる経動脈塞栓術、“出口”である病変部静脈洞を閉塞させる経静脈塞栓術、その両者を併用する場合があります。 頻度の高い疾患ではなく、その治療方針には高度な判断、経験や技術の蓄積が必要となります。
目の充血、腫脹で発見された、海綿静脈洞部の硬膜動静脈瘻(矢印)
目の静脈への逆流が充血の原因となっている他、脳の静脈のへの逆流も認められ、脳出血の危険性もある病態。
目の静脈を介してカテーテルを病変へ進め金属コイルを用いて閉塞した。(経静脈塞栓術)