「できるだけ少ないステロイドで症状を良好にコントロールすること」が治療目標となります。
ステロイドは重症筋無力症に有効な薬です。しかし、高用量を長期間使用すると、糖尿病、骨粗しょう症、感染症、など、さまざまな副作用が起こることがあります。
そのため、必要に応じて免疫グロブリン大量静注療法や血液浄化療法、分子標的治療薬などを早期から組み合わせることで、 高用量ステロイドを長期間使用することなく、病気を安定した状態へ導くことを目指します。
このような治療方針を「早期治療戦略(Early Fast-acting Treatment:EFT)」と呼び、我が国の重症筋無力症診療ガイドライン2022で推奨されています。
早い時期に適切な治療を開始するほど良好な経過が期待できることが分かっていることとから、症状が比較的軽い場合でも、将来の重症化を防ぐ目的で、入院での治療をおすすめすることがあります。
神経から筋肉への信号を伝えやすくすることで、筋力低下を改善します。
※病気そのものを治す薬ではなく、症状を和らげる薬です。
異常な免疫を抑え、神経と筋肉のつなぎ目の炎症を改善します。
免疫細胞(T細胞)の働きを抑え、自己免疫の異常を改善します。
薬の効果と副作用を確認するため、定期的に採血を行い、血中濃度を測定しながら治療を進めます。
献血から作られた免疫グロブリンを点滴し、異常な免疫反応を調整する治療です。
基本的に5日間の連続投与となります。
比較的速やかに効果が期待できるため、症状が悪化した場合などに行います。
ステロイドを3日間程度、点滴で大量投与する治療です。
比較的速やかな効果が期待でき、眼症状を含めた症状の改善に用いられます。
短期間の使用なので、長期内服で生じるような副作用は少ないです。
血液を体の外に取り出し、病気の原因となる自己抗体などを取り除いてから体内へ戻す治療です。自己抗体を直接除去するため、最も速やかな効果が期待できる治療法の一つです。
治療には十分な血液の流れが必要なため、首や足の付け根の太い静脈に専用のカテーテルを留置して行います。
治療中は医師・看護師・臨床工学技士が連携し、安全に治療を行います。
当院では、血漿浄化療法を数多く経験している臨床工学技士が担当し、医師・看護師と連携しながら、安全で質の高い治療を提供しています。
分子標的薬とは病気のメカニズムに関わる特定の分子をピンポイントで狙う薬の総称です。重症筋無力症では、現在、FcRn製剤と補体阻害薬の2種類の薬剤が認可されています。
この薬剤は、病気の原因となる抗体を減らすことで、重症筋無力症の症状を軽減させることが期待されます。私たちの体には、一度作られた抗体を回収して何度も使うリサイクルの仕組みがあります。
FcRn製剤は、この仕組みを一時的に止めることで、抗体が自然に分解されるように働きます。その結果、病気の原因となる抗体が減り、症状の改善が期待できます。
一方で、病気の原因となる抗体だけでなく、感染症から体を守る抗体も一時的に減らします。そのため、感染症にかかりやすくなる可能性があり、注意が必要です。
投与方法は薬剤によって異なりますが、多くは週1回の投与を数週間続けて1コースとします。
FcRn製剤には自己注射が可能な皮下注射製剤があります。当院では、経験が豊富な看護師が十分に説明・指導を行うことで、多くの患者さんが自宅での自己注射が可能となっております。
「補体(ほたい)」という言葉は聞き慣れないかもしれませんが、体を細菌などから守る免疫の仕組みの一つです。アセチルコリン受容体抗体陽性の重症筋無力症では、補体により神経と筋肉のつなぎ目で炎症が生じます。補体阻害薬は、その名のとおり補体の働きを抑えることで、神経と筋肉のつなぎ目が傷つくのを防ぎます。その結果、症状の改善や、これ以上傷つくのを防ぐことが期待されます。
投与方法は薬剤によって異なり、8週間に1回程度の点滴や、毎日ご自身で行う皮下注射などがあります。患者さんの病状やライフスタイルに合わせて治療法を選択します。
FcRn製剤や補体阻害薬は、重症筋無力症に対して高い効果が期待できる新しい治療薬です。
ただし、「すべての患者さんがこの治療の対象となるわけではありません。」
まずは標準的な治療を行い、それでも十分な改善が得られない場合や、副作用のために通常の治療を続けることが難しい場合などに、この治療を検討します。
どちらの薬が適しているかは、重症筋無力症のタイプ、症状の程度、これまでの治療経過、ライフスタイルや通院状況などを総合的に考慮して判断します。
担当医と十分に相談し、それぞれの薬の特徴やメリット・デメリットを理解したうえで、一人ひとりに合った治療を選択します。
重症筋無力症の症状・原因・診断について、もっと知りたい方は
重症筋無力症のページへ