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胆石症は、胆石(肝臓や胆管、胆嚢にできる石のことです)によって生じる病気の総称です。
胆嚢は脂肪の消化を助ける胆汁という消化液を貯める臓器です。胆汁はコレステロール、レシチン、胆汁酸、ビリルビンなどの成分で構成されていますが、これらの成分のバランスが崩れることにより胆石が発症します。中でもコレステロールを主成分とするコレステロール結石が頻度の高い結石として知られておりますが、原因として40歳代、女性、肥満などがあります。他にはビリルビンを主成分とするビリルビン結石がありますが、こちらは細菌感染が原因と考えられています。
胆石があるからと言っても必ず症状が現れるとは限りません。胆石がある方の23%は無症状と言われております。代表的な症状は右季肋部痛(右の肋骨付近の痛み)ですが、中には心窩部痛(みぞおち付近の痛み)や右の背中に痛みを感じる場合もございます。 痛みの他に発熱が生じる場合もございますが、これは胆汁に細菌感染がついた状態で急性胆嚢炎と呼ばれます。このような症状のある胆石症・胆嚢炎に関しては治療の適応となります。 急性胆嚢炎においては、発症72時間以内であれば積極的に腹腔鏡下胆嚢摘出術を行うようにしておりますが、患者様の全身状態や検査データによりまずは保存加療を消化器内科にお願いすることもございます。急性胆嚢炎でお困りの方がございましたらまずは当科までご連絡いただけますと幸いに存じます。
内科的治療においては胆石溶解療法、体外衝撃波(ESWL)などがございますが、いずれも非常に有効的な治療法とまでは言えないのが現状です。基本的に外科手術である胆嚢摘出術が第一選択となります。当科では胆嚢手術のほとんどを腹腔鏡下胆嚢摘出術で行っております。
腹腔鏡下胆嚢摘出術の利点、開腹手術と比較して、①傷が小さい、②術後の傷の痛みが少ない、③消化管運動の回復も早いため、食事開始が早くできる、④結果として入院期間が短い、といったことが挙げられます。 次に、腹腔鏡下胆嚢摘出術の具体的な手順を示します。 腹腔鏡手術は、お腹の中に二酸化炭素のガスを入れて膨らませ、腹腔鏡という細長いカメラをお腹に挿入し、テレビモニターを見ながら行う手術方式のことを指します。施設によって異なる点もございますが、当科では臍、心窩部、右側腹部2ヵ所の計4か所の小さな傷を開けて手術を行う方法を採用しております。腹腔鏡下胆嚢摘出術と開腹胆嚢摘出術の傷の違いを以下の図に示します。
また、比較的炎症が軽度な胆嚢炎、胆石症に対しては単孔式腹腔鏡下胆嚢摘出術も導入しております。ご希望の方はご相談ください。
2018年1月1日から2018年12月31日までの過去1年間における腹腔鏡下胆嚢摘出術は82例ございました。そのうち炎症などで開腹移行が必要であった方は2例(約2.4%)でした。
胆石症の炎症の度合いや開腹移行の有無などにより多少異なりますが、およそ5日間程度です。
腹腔鏡下胆嚢摘出術における合併症としては、出血(傷からの出血・胆嚢の血管からの出血)、感染症(創感染・腹腔内膿瘍)、胆汁漏(胆管損傷によるもの・胆嚢管の閉鎖が不十分なことによるもの)、胆管狭窄、肝損傷、十二指腸損傷などが可能性として挙げられます。
当科での2018年1月1日から2018年12月31日までの過去1年間における合併症症例は、胆管損傷0例、他臓器損傷0例、腹腔内膿瘍0例でした。
当科では胆石症、胆嚢炎以外でも胆嚢ポリープ(良性の場合)や胆嚢腫瘍(両悪性の区別が難しく、診断的治療を兼ねて)に対しても積極的に腹腔鏡下胆嚢摘出術を取り入れております。こちらに関しましてもお気軽にご相談下さい。