手術方法は前方切開法と腹腔鏡法があります。前方切開法は従来から行われてきた方法で、足の付け根を、子供では1-2cm、大人では5-6cm切開して行う手術です。子供では鼠径ヘルニアの袋を縛って閉じるPotts法を、大人では鼠径ヘルニアの穴をメッシュで閉鎖する手術を行います。大人の前方切開法にはメッシュの置く部位によって、Lichtenstein法、Mesh plug法、Kugel法、Direct Kugel法など様々な術式があります。
腹腔鏡法は近年、全国で急速に普及してきた新しい術式です。前方切開法と比べて痛みが少なく、術後の回復が早く、体に優しい術式と言えます。おへそと他に1-2か所1cm程度の小さなキズで手術を行います。おなかの中からみると、穴が開いているところが直接見えますので、反対側の鼠径ヘルニアの有無も確認することができます。子供では鼠径ヘルニアの袋の根本を縛るLPEC(エルペック)法を、大人では腹腔鏡下に鼠径ヘルニアの穴をメッシュで閉鎖するTAPP(タップ)法、TEP(テップ)法を行います。
腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術にはTAPP法とTEP法が存在します。TAPP法の正式名称はTrans-Abdominal Pre-Peritoneal repair(経腹的腹膜外修復法)と言って、おなかの中から鼠径ヘルニアの穴を確認し、その周りの腹膜を切開・剥離し、鼠径ヘルニアの穴をメッシュで閉鎖し、腹膜を閉鎖します。TEP法はTotally Extra-Peritoneal repair(完全腹膜外修復法)と言って、おなかの中に入らずに、おなかの壁の中で、筋膜と腹膜の間を剥がして鼠径ヘルニアの穴まで到達し、メッシュで穴を閉鎖します。TAPP法はおなかの中から鼠径ヘルニアの穴を確認できるという利点が、TEP法はおなかの中に入らずに修復できるという利点があります。当科では、理論的に腹腔内合併症が起こりえない理想の術式であるTEP法を第一選択としております。
*患者様の既往や全身状態によっては全身麻酔が困難な場合もあります。全身麻酔ができないと腹腔鏡手術は行えませんので、局所麻酔下に鼠径部切開法による鼠径ヘルニア修復術を行います。
*入院期間については極力患者様の要望に応えたいと思います。お忙しい患者様で希望があれば日帰り手術なども、また体力に自信が無かったり、痛みが辛い場合は入院期間の延長などもご相談させて頂きます。
*手術の時期や術式、入院期間など、何か要望があれば極力対応したいと考えております。お気軽にお申し付け下さい。
*当院では内視鏡外科学会技術認定医を中心に鼠径ヘルニア診療を行っておりますので、安全・確実な手術を受けて頂くことができます。
感染:創が感染すると一部開放する必要があります。メッシュが感染すると治療に難渋し、最終的にメッシュ除去が必要になることもあります。
血腫:術後に創の下に血の塊ができることがあります。通常、圧迫で落ち着きますが、量が多い場合は血腫を除去する手術が必要になります。
水腫:もともと膨らんでいたところに水がたまることがあります。自然に吸収されるので基本的には処置は不要ですが、痛みなど症状が強ければ穿刺吸引することもあります。慢性疼痛:鼠径部には知覚神経が存在し、手術操作やメッシュにより神経が障害されたり、メッシュそのものがしこりとなって痛みの原因となり、痛みが長く続くことがあります。腹腔鏡法では、鼠径部切開法に比べて慢性疼痛の頻度が少ないと言われております。慢性疼痛に対しては鎮痛剤の投与や、ブロック注射などを行いつつ、必要に応じてメッシュ除去や神経切除術などの手術治療が必要になることがあります。
*当院では各種合併症を予防するため、手術中に様々な工夫を行なっておりますので、安心して手術を受けて頂くことができます。
*鼠径ヘルニア術後の慢性疼痛でつらい思いをされている患者様は、一度当外来にご相談下さい。麻酔科医師と共同で治療に当たらせて頂きます。