婦人科がん
婦人科のがんについて知りたいです。
婦人科のがんには大きく分けて「子宮頸がん」「子宮体がん」「卵巣がん」の3つがあります。この他に「外陰がん」や「腟がん」、女性生殖器から発生するわけではありませんが婦人科で取り扱われることの多い「腹膜がん」などがあります。しかし前者の3つに比べ後者は頻度が低いので、ここでは「子宮頸がん」「子宮体がん」「卵巣がん」について説明します。
婦人科のがんとはどんながんですか?
「子宮頸がん」はここ数年マスコミの話題になることが多い、「ヒトパピローマウイルス(HPV)」が原因のほとんどで、「ワクチン」によって予防可能ながんです。現在ほとんどの子宮頸がんの原因はHPVの子宮頸部への持続的感染にあるといわれ、この感染を防ぐ目的でワクチンが開発されました。子宮頸がんの発生やワクチンについては、専用の項で詳しい説明をしています。子宮頸がんは子宮頸部という子宮の入り口にできる悪性腫瘍で、多くの場合は不正出血、性行為後の出血などで発見されますが、腹痛で受診した患者様や症状に乏しかった患者様もいます。子宮頸部のすぐ前には尿をためる膀胱があり、またすぐ後には直腸という肛門に近い部分の大腸があります。このため腫瘍が大きくなると、腫瘍からの出血が多くなる他に、膀胱や直腸ががんによって侵されることになります。
「子宮体がん」は子宮の奥の方にできるがんで、多くの場合は不正出血を起こします。子宮内膜がんともいわれ子宮の内側にある内膜から発生するがんです。閉経年齢の遅い人や出産したことがない人、肥満の人などに子宮体がんのリスクが高いことが知られていて、最近徐々に増えてきています。子宮体がんのがん検診は子宮頸がんに比べて、病変を発見する精度が低いのが問題点であり、子宮体癌が強く疑われるときには手術をして、検査と治療をかねる場合もあります。
「卵巣がん」は子宮の横にある卵巣に発生するがんで、なによりも自覚症状に乏しいことが早期発見のむつかしい理由となっています。お腹が飛び出してきた、はってきた、膀胱が圧迫されて排尿の異常がある、などの症状が出てくるときには進行していることが多いといわれています。いまだ効果的な早期発見の方法は確立されていませんが、下腹部に違和感を感じたときには婦人科を受診してください。
がんの治療方針について
婦人科がんはその進行期によって治療の方針が決まります。例えば子宮頸がんでは、極めて初期の前がん病変や上皮内がん(0期)であれば、子宮頸部の部分的な切除や子宮を摘出(単純子宮全摘)します。このふたつの治療法の選択は、今後の妊娠出産のご希望や再発の可能性などを合わせて考え、患者様と相談して決めています。
がんが子宮頸部から出ていない1期の場合、がんが周りの組織に広がり始めている2期の場合には子宮を摘出する手術が行われます。ただし0期での子宮摘出とは異なり、子宮頸部の周りの組織や腟を一緒に摘出する広汎子宮全摘術という手術になります。同時に両方の卵巣や骨盤内のリンパ節も摘出することによって病気の根治を目指します。また腫瘍の大きさなどの状況によっては、放射線治療という選択肢もあります。アメリカの子宮頸がんの治療に関するいくつかのガイドラインでは、この病期における手術と放射線治療は並列の選択肢とされていますが、日本では完成度の高い手術が開発され改良を加えられてきた歴史があり、海外に比べると手術によって治療を行うことが多いといわれています。3期や4期といわれる進行がんの場合には第一選択は放射線治療となります。また同時に抗がん剤治療を組み合わせてより治療効果を高める場合もあります。
以上簡単にご説明しましたが、実際には進行期(ひろがり)と組織型(顔つき)、患者様ご自身のご希望やご家族の意見などを総合的に判断して治療法を決めていくことになります。外来受診時、あるいは入院時に十分な時間をとって、病状の詳細についての説明や患者様の疑問に思っていることに対する説明をしています。