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独立行政法人 国立病院機構 北海道医療センター
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子宮内膜症

子宮内膜症という病気について知りたいです、どんな病気ですか?

子宮内膜症とは、子宮内膜(毎月の月経時に出血する部分)やそれに類似した組織が、本来の存在部位である子宮内腔以外の場所で増殖し、月経周期に伴って正常の子宮内膜同様に出血を起こすことで、月経痛をはじめとするいろいろな症状を引き起こす疾患です。多くの場合、子宮内膜症の病変は骨盤内(下腹部)に存在しますが、それ以外の場所で起きることもあります。子宮や卵管の表面の病変は、腸などの周囲の組織と癒着したり、卵巣の病変はチョコレート嚢胞と呼ばれる古い血液の貯まった袋を形成します。

月経痛が強いです、子宮内膜症でしょうか?

月経痛はいろいろな原因によって起きるため、必ずしも子宮内膜症があるとは限りません。特に20歳くらいまでの女性の月経痛は、まだホルモンバランスなどが完成していないことに起因するともいわれており、多くの場合は経過をみているとよくなります。一方、20歳以上の女性で月経痛が強く鎮痛剤を使用しても痛みを抑えることができない、年々月経痛がつらくなってきた、などの場合には子宮内膜症がある可能性があります。また性行為のときや排便時に痛みがある、月経時以外にも腹痛がある、月経時に下痢をしやすい、などの場合にも子宮内膜症の存在を考えます。

なぜ子宮内膜症になるのですか?

子宮内膜症の原因については、月経時にはがれた子宮内膜が卵管を通って腹腔内に移動する、などいくつかの説がありますが、現在まだ解明されていません。しかし、子宮内膜症は現代病といわれ、女性の妊娠出産が昔よりも減少し高齢化したことがホルモン動態などを通じて関連しているといわれています。

子宮内膜症の治療にはどのようなものがありますか?

子宮内膜症の治療は、日本子宮内膜症協会のホームページにも「どのような治療をしても閉経までは完全に治ることはない」と記載されているように、非常にむつかしいといわれています。当院でも子宮内膜症そのものを完全に治すことを目標とするのではなく、子宮内膜症によって生じるつらい症状が最大限改善するように治療法を選択する、という方針で診療を行っています。子宮内膜症の治療には大きくわけて薬物療法と手術療法があります。薬物療法は低容量ピルまたはGnRHアゴニストと呼ばれるホルモン剤などを用いて排卵を抑制したり、ホルモン動態を閉経状態にすることにより治療をします。手術のようなお体への侵襲はありませんが、ホルモン動態が変わることによる副作用(更年期症状)や血栓症のリスクがあります。またあくまでも一時的な効果しかないといわれています。手術療法には、保存的手術と呼ばれる手術、すなわち子宮内膜症の病巣部を摘出、焼灼したり癒着部位を剥がしたり、卵巣のチョコレート嚢胞を摘出する手術と、根治的手術と呼ばれる手術、すなわち子宮や卵巣を全部摘出する手術があります。どのような治療を選択するかは、それぞれの患者様がどのようなことに一番苦しんでいて、どのようなことを目標とするかによりますが、現在医学的に最も再発を防ぐことができるのは腹腔鏡による的確な保存手術であるといわれており、欧米の医療では腹腔鏡による手術が薬物療法よりも優先されているのが現状です。
また症状によっては漢方薬を治療に用いる場合もあります。